馬鹿だバナナだ皮バナナ

(ばかだばななだかわばなな)
初演日:0/0 作者:チェストナット
【馬鹿だバナナだ皮バナナ】              

【登場人物】
・探偵たち
宮根茂出 菜衣(ぐうのねもで ない)……探偵。名探偵を夢見る馬鹿。
厚戸岩 世琉 (あつといわ せる)……探偵。菜衣の助手として足を引っ張るアホ。

・刑事たち
水二奈 雅寿 (みずにな がす)……巡査長。飛礫の年上の部下。言うほど馬鹿ではない。
梨野 飛礫  (なしの つぶて)……警部。雅寿の年下の上司。気苦労の多い毒舌。

・女子高生たち
一芝 いうつ (ひとしば いうつ)……容疑者。自分のことを普通だと思っている天然。
府江中野佐 祝(ふこうちゅうのさ いわい)……容疑者。最近ツッコミの腕が上がった。
何不食 佳緒 (なにくわぬ かお)……容疑者。テンションが上がるとおかしくなる。
摘猛者 琉萌乃(てきもさ るもの)……容疑者。口と目つきと性格が悪い。
見芽賀 アル (みるめが ある)……被害者。究極の天然ボケ。地味に執念深い。





      幕が上がる前に。

アル 「うわあ!」

   滑って転ぶ音、何か固いものにぶつけた音。直後に救急車とパトカーのサイレン。
   しばらくしたら決戦前に鳴ってそうな風のSEに切り替える。開幕。L.O。段々音響大きくなる。
   アルの家の離れ。
   舞台の中央にテーブル。そのすぐ客席側に、人形の白線。頭がテーブルのすぐ傍で、足元は客席側。足元にはバナナの皮。
   舞台奥の壁には、等間隔で二つの窓枠。舞台上手側には、袖から少し離れたところに   
   茶色い扉。扉の近くには、女子高生四人の私物(バッグとかラジカセとか)。
   舞台中央に佳緒というつが向かい合って睨みあっている。

佳緒 「ふっ、どうやらとうとうこの時がきたみたいだね」
いうつ「ええ、あの長年の問題に決着をつける時が」
佳緒 「そう、今こそ、全世界の学者たちが頭を悩ませてきたあの問いに答えを出す時」
いうつ「何十年、いや、何百年も昔から、人々はこの問いの答えを探し続けた」
佳緒 「でも、もう終わりだよ」
いうつ「私たちがその答えを出す!」
佳緒 「準備はいい、いうつ? いくら中学以来の友達だからって、私は容赦しないよ」
いうつ「望むところだよ。私は、私が信じる道に進むのみ」
佳緒 「よく言った! それでこそいうつだよ」
いうつ「それじゃあ佳緒、準備はいい? 両者手加減なしの一発勝負、行くよ!」

   祝、琉萌乃、雅寿と飛礫を連れて登場。
   祝、二人にの間に流れる緊迫した空気に気づかず飛礫と雅寿に説明している。

祝  「それでですね、刑事さん。ここがアルの家の離れで」
飛礫 「なるほど、ここが事件現場ですね」
祝  「あっ、さっきまでいた鑑識さんたち帰っちゃったんですね。残ってるのは入り口のお巡りさんだけですか」
飛礫 「そうみたいですね。あ、あの白線が被害者の倒れてたところですか」
祝  「そうです。それで、私たちがあそこに倒れてるアルを見つけたのはですね……
    あっ、いうつ、佳緒!刑事さんたち来てくださったよ」
いうつ「……」
佳緒 「……」
祝  「えーっとね、こちらの刑事さんが……あっ、そういや名前聞いてなかった。
    えっと刑事さん、お名前なんて言いますか」
いうつ・佳緒『空気読めえ!』
祝  「え、何? なんなの?」
いうつ「この荘厳な音楽から察してよ!」
祝  「えっこの風の音、荘厳?」
飛礫 「それ以前に音楽なんですか」
佳緒 「(無視して)まったくもう、今ね、私たちは重大な話をしていたところなんだよ。
    聞きたい? 聞きたいよね? あのねバ――」
琉萌乃「(遮って)今年のいろは坂46総選挙以上にどうでもいい話してないでくれる?」
佳緒 「まだ何も言ってないのに」
祝  「それファンに殴られるよ」
琉萌乃「いやどうでも」
いうつ「むしろ殴られてこい」
祝  「で、なんの話だったっけ」
琉萌乃「(食い気味に)うるさい」
祝  「ひどっ」
琉萌乃「違うよ、たしかにいつもうるさいけど今回だけは珍しく祝じゃない。この風の音」
祝  「あっ、なぁんだよかったぁ……って琉萌乃?」
雅寿 「たしかにうるさいな」
飛礫 「いやでも先輩よりはマシですよ」
雅寿 「俺ここに来てから、まだ今の一言しか言ってないのに」
飛礫 「存在がうるさいです」
雅寿 「!?」

   佳緒、ラジカセを止める。同時に音響消える。

雅寿 「ラジカセ?」
いうつ「なんかムード出るかなーって思いまして」
雅寿 「なんの?」
いうつ「一世一代の大勝負なんですよ、やっぱり全力で戦いたいじゃないですか」
雅寿 「え」
佳緒 「全人類の命運がかかった世紀の闘いなんです!」
いうつ「この闘いに勝利することが、私たちの使命なんですから!」
雅寿 「はぁ」
いうつ「さぁ佳緒、今度こそちゃんと決着をつけよう」
佳緒 「望むところだよ」
いうつ・佳緒『(存分にタメてから)バナナはおやつに入りま』
佳緒 「(いうつと同時に)す!」
いうつ「(佳緒と同時に)せん!」
佳緒 「だから何度も言ってるじゃん、バナナはお・や・つ!」
いうつ「バッカじゃないの、おやつなわけないじゃん!」

   二人、邪魔にならない程度に言い争い。
   残りのメンバーは呆れ顔。

祝  「んー、まー、これはあれだよね、えーっと、なんていうか、んー」
琉萌乃「この上なくどーでもいいね」
祝  「言い切った! 私がためらったその先を容赦なく口にしやがったコイツ」
雅寿 「この方たちは、全日本バナナ連盟の会員かなんかで?」
琉萌乃「そんな高尚なモンじゃありませんよ。ただの変態です」
祝  「また言い切った! 友達を躊躇なく変態って言い切りやがった」
いうつ「(戻ってきて)なら、客観的な意見を聞いてみようよ」
佳緒 「いいね、そうしよ」
いうつ「(雅寿に迫って)さあ、あなたはバナナはおやつに入ると思いますか」
雅寿 「えっ、えーっ」
佳緒 「はっきりしてくださいよ、これはかの有名なミレニアム問題のひとつ、
    そう、あのアメリカのクレイ数学研究所によって2000年に発表された
    100万ドルの懸賞金がかけられている7つの問題のひとつなんですよ」
飛礫 「ミレニアム問題はすべて数学の問題ですし、
    それと同系列に語るとはこの方々は神をも恐れないんですかね?」
琉萌乃「希代の馬鹿ですので」
飛礫 「なるほど、納得です」
祝  「(ボソッと)コイツら、生き別れた双子だったりするのかな」
いうつ「で、そこのあなた、やっぱりバナナはおやつに入りませんよね?」
佳緒 「なぁに言ってるの。この人はバナナはおやつに入るって言ってたよ」
雅寿 「俺そんなこと言った覚えは」
佳緒 「言ってるじゃないですかー、こう、あれですよ、体全身がね、
    なんと言うか、激しく訴えてると言いますか」
雅寿 「何それ強引」
いうつ「(謎のノリで)まあ、そんな……! 
    ひどいわあなた、君しかいない、僕が愛してるのは君だけだって言ってたのに」
雅寿 「はぁ?」
いうつ「裏切ったのね! サイテー! うえーん」
雅寿 「何この超展開」
祝  「これあれだ、よくお昼に主婦とか見てるヤツだ」
琉萌乃「昼のメロドラマだね」
飛礫 「サイテーですね先輩」
雅寿 「お前普段ノリ悪いくせに、こういうとこだけノるなよ」
佳緒 「(同じノリで)ちょっと嘘でしょ、私にもおんなじこと言ってたじゃない」
雅寿 「ええ?」
佳緒 「二股かけてたなんて、ひどい!」
雅寿 「本当にになんなんだよ」
琉萌乃「(汚物を見るような目)うわあ」
雅寿 「ええ……」
いうつ「結局、用が済んだらあっさり捨てちゃうのね!」
佳緒 「騙されたわ! うわーん! 大っ嫌い!」
雅寿 「つ、ついてけねえ! てかよく初対面の人間にそこまで馴れ馴れしくできるな」
佳緒 「あっほんとだあんた誰?」
いうつ「あっ知らんわそんで誰?」
琉萌乃「手のひら返したように」
いうつ「なんかそこら辺にいたからなんとなく巻き込んでみたんだけど、あんた誰?」
雅寿 「なんかこう、先が思いやられるよな」
飛礫 「何言ってるんですか、
    先輩が事情聴取の担当になった時点でこの事件は迷宮入り確定なんですよ」
祝  「ねえ琉萌乃、たしか生き別れた双子のお兄さんいたよね?」
琉萌乃「いないけど?」
佳緒 「あれ、今なんの話してたんだっけ」
雅寿 「忘れたのかよ」
いうつ「あーなんだっけ、あっそーだ! バナナの話だよ!」
佳緒 「あーね」
雅寿 「……俺の名前ってそんなどーでもいい話なの?」
飛礫 「何言ってんですか、先輩の上司として配属されてから早三年ですが、
    僕は未だに先輩の名前を把握してないんですよ」
雅寿 「なんの慰めにもなってねーよ。てか部下の名前忘れんな!」
飛礫 「失礼ですね。忘れてるわけないでしょう。忘れる以前に、そもそも記憶してないんですから」
雅寿 「覚えろよ、いい加減に覚えろよ!」
飛礫 「覚える気すらおきないので」
佳緒 「てか上司だったんだ」
琉萌乃「どう見てもガキ……おほん、年下なのに?」
飛礫 「今聞き捨てならない言葉が聞こえてきた気雅寿るんですが?」
琉萌乃「(祝を指して)コイツが言いました」
祝  「なんで私」
飛礫 「まぁいいんですけど。んーまあ、僕はこの人の年下の上司ってとこですね。
    一応これでも警部ですので」
いうつ「えっ警部! ……で、それおいしいの」
飛礫 「あーうん、そうなりますよね仕方ないですよね。
    ……自己紹介が遅れましたが、僕は梨野飛礫。今回の事件の担当になりました。よろしくお願いします」
雅寿 「俺は水仁奈雅寿。えーっと、階級は巡査長。雅寿って呼んでくれ」
琉萌乃「分かりました、刑事さん(にっこり)」
佳緒 「それにしても面白い名前ですねー。なしのつぶてに、水に流す」
琉萌乃「何食わぬ顔で何言ってんの」
佳緒 「私たちも自己紹介しますね。私は何不食佳緒って言います。高校三年生です。
    今回の事件では……えーっと、第一発見者というか、被害者の友人というか、
    被害者と最後に会った人間のうちのひとりというか」
祝  「あ、私は府江中野佐祝です。えーっと、私も佳緒と一緒で――」
琉萌乃「(遮って)なら省略でいいね」
祝  「え」
琉萌乃「(無視して)摘猛者琉萌乃です。
    被害者のアル……あ、見芽賀アル、ちゃん? とは友達と呼ぶほどの関係でもなかったですがまぁ、
    知り合い以上くらいではあったんじゃないですか」
祝  「投げやり! そして過去形使うな」
いうつ「私は一芝いうつ、って言います。アルの友達で、まあほとんど佳緒に同じくです。
    好きな未確認生物は、ありがちですがチュパカブラですね」
雅寿 「いや誰それ」
飛礫 「まさか知らないんですか先輩」
雅寿 「お前知ってんのか」
飛礫 「(食い気味で)知るわけないでしょう」
雅寿 「何がしたいんだお前」
飛礫 「まぁ、自己紹介も終わりましたし、本題に入りましょうか」
佳緒 「本題、ああそっか、事件の話ですね」
祝  「まさか今の今まで忘れてたの」
佳緒 「まさか。だって、バナナの話になったのだって、今回のことがあったからだし」
いうつ「うん、そうだよ。だってほらさ(床に落ちているバナナの皮を指さす)」
飛礫 「あー、なるほど。まぁたしかに今回の事件……ん、事件と呼んでいいのかも分かりませんが、
    とにかく今回のことには、バナナが深く関わってきてますもんね」
琉萌乃「正確にはバナナの皮ですが」
佳緒 「やっぱり、あのバナナの皮が凶器、なんですかね?」
雅寿 「(バナナの皮を眺めて)うーん、まぁ多分そうだろうなあ。
    ほら、こことかちゃんと靴跡ついてるし(結構くっきりと靴跡)」
飛礫 「おっ、先輩にしては鋭いですね」
雅寿 「いや普通サルでも気づくだろ」
飛礫 「先輩、サルに喧嘩売ってるんですか?」
雅寿 「どの辺がだよ」
飛礫 「先輩ごときがサルに喧嘩吹っ掛けるのは無謀がすぎますよ?」
雅寿 「お前俺のことなんだと思ってる?」
祝  「なんか刑事さんたちまで来て大事になっちゃいましたけど、私はこれ純粋に事故だと思うんです」
飛礫 「僕も正直そう思ってるんですが……。まぁ、それを確かめるために、皆さんに話を聞きに来たんですよ。
    一応ある程度の内容は、通報を受けた巡査からの報告で知ってはいるんですが、
    なんせ今は被害者には聞けないですしね」
佳緒 「あー救急車で運ばれていっちゃいましたもんねえ」
雅寿 「と言うわけで、この部屋に倒れている被害者を」
飛礫 「(被せるように)被害者を発見した時の様子をお聞かせ願えますか?」
雅寿 「なんで遮った」
飛礫 「先輩が喋るとろくなことがないので」
雅寿 「それ俺のせいかな」
飛礫 「では誰のせいだと言うんです?」
雅寿 「お前……いや、なんでもない」
飛礫 「(無視して)警察に通報が入ったのが、今から三十分前の午後二時半ですね。
    内容は、この家に一人で暮らす高校三年生の見芽賀アルさんが、
    自宅の敷地内にある離れの中に倒れている、と言うものでした。
    てか離れがあるとかどんだけ金持ちなんですか。ちっ、金持ちめ」
佳緒 「某株式会社の社長のひとり娘なんですよ、アルは。
    まぁ親御さんは基本的に海外出張しててほぼ一人暮らしなんですけどね。で、その通報をしたのは私たちです。
    倒れている彼女を発見して慌てて電話しました」
琉萌乃「みんなであそこの窓から覗いたんです。ドアはあそこだけなんですが、鍵がかかってたんで。
    あ、窓も鍵がかかってて、割れたりもしてませんでした」
いうつ「業界用語で言う、『密室』ってやつです」
雅寿 「『密室』って業界用語か?」
飛礫 「どちらかと言うと死語では?」
いうつ「死語じゃないですよ。幼稚園児からおじいちゃんおばあちゃんまで、ごく一般的に使われる業界用語です」
祝  「一般的に使われてるんなら業界用語じゃないんじゃ」
いうつ「(遮って)密室の歴史は深くてですね。
    そうですね、やはり密室と言えばディクスン・カー、またの名をカーター・ディクスンと言いますが」
飛礫 「ミステリーマニアですね」
雅寿 「ミステリーオタクだな」
琉萌乃「いつものことなんで。『あーかわいそうな人がいるなぁ』くらいで軽く流してやってください。
    実際かわいそうな人ですし」
雅寿 「もしかして君、友達少ないんじゃ」
琉萌乃「(遮って)それでですね。窓からだと室内がよく見えなかったので、
    その時の私たちは『アルまた倒れてるなー机に頭打ったのかなー』程度のことしか考えてませんでした。
    いくら呼びかけても全然反応がなかったので、さすがにマズいかなー、とは思ったり思わなかったり」
飛礫 「どっちですか」
琉萌乃「どちらでも」
雅寿 「はっきりしろよ」
琉萌乃「あなたに言われたくないですよ二股男」
雅寿 「さっきの話?」
琉萌乃「でも正直なところ、そんな感じなんですよ。
    アルのことだから、床に寝っ転がって天井のシミの数を数えてたらそのまま眠っちゃったのかもしれないし」
飛礫 「自由奔放とか言う域には収まらない人なんですね」
いうつ「もし転んで机に頭をぶつけたんだとしても、
    起きるのが面倒くさいって理由で起きなかっただけかもしれないし」
祝  「実際昔そんなことあったし」
佳緒 「でもさすがに、五分以上ドアぶっ壊しそうな勢いで叩いてたのに反応しないことはないと思うし」
いうつ「警察呼んだ結果、普通に無事だったとしても、アルのお父さんの権力でなんとかなるかなーって思ったし」
琉萌乃「まぁそんな感じです」

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