雪、恋、手の温度。

【上演申請の方法は「その他」欄に記載あり】

(ゆき、こい、てのおんど。)
初演日:2020/1 作者:松本隆志(:Aqua mode planning:)
同窓会の誘いが来た。

校庭の端に埋めたタイムカプセルを掘り返すらしい。最近の子らもそういうの、やってる
のかな。現役の学生を最近の子と呼ぶ程度の年齢に、気が付けば自分もなっている。
当時好きだった相手を思い出して、うっかり名前を検索してみる。特に珍しい名前でもな
く同姓同名がいくらでも見付かる。名前が同じだけでそれぞれに人生の異なる他人。結
果、本人らしき人物は見当たらなかった。電子の海には彼女はいない。いるのは何処だか
分からない現実と、自分の記憶の中。なんて、うっかりポエマーになりかける。なかなか
手強い日々の暮らしの中、美化した思い出に酔うのくらいは許されたい。

自分が住んでいた町は学区の果てで、あと数百メートル西側になると別の学校に通う事に
る。小学校は徒歩通学だった。暑かろうと寒かろうと6年間毎日片道3kmを歩いた。前
世の業にしか思えなかった。中学校に上がってからは、自分達と隣のエリアだけは自転車
通学。他エリアの民から羨ましがられ、業から解き放たれて逆転した心境でペダルを漕い
�Ǥ�����
ただ、そのペダルの動きを止めようとする障害があった。坂だ。この町は何処へ行こうと
しても坂がある。特に学校へ向かう途中、かなりの急勾配、降りて登る坂があった。だっ
たら平坦でいいんじゃないか。しかもその坂の脇に豚の屠殺場があったから、酷い匂いが
した。坂のどちら側から来ても、登る時には立ち漕ぎで大量に息を吸うのに、そのロケー
ション。地獄だった。業は未だ続いていた。一本隣の大きな国道であれば平坦で、出来れ
ばそちらを通りたい。だが、親から、学校に届けを出した道以外で事故に遭うと保険が下
りないからね、と釘を刺されていた。


�����Ĥˤϣ�ǯ���ۤ����ä���

小5・小6は同じクラスだった。アイツは線が細くて、鼻の辺りに少しそばかすがあっ
た。髪は元々ロングでポニーテール。水泳の授業の後、乾くまで髪を下ろしてるのを見
て、なんだか特別なものを見た気がした。その後、バッサリ切ってショートになった時に
自分の持った感想が「あああああ」だった。心が震えすぎて語彙力がなくなった。

アイツは友達が多い様には見えなかった。他の女子と喋る姿も記憶にない。とにかく、い
つでも中村さんと一緒にいた。休み時間も遠足もトイレに行くにもいつも中村さんと一
緒。いつも2人だけで何を話しているのか想像もつかず、独特な存在に見えていた。そこ
に割って入ってまで声を掛ける理由もなく、ただただ視界の片隅にアイツがいたらちょっ
と嬉しい。訂正。とめどなく嬉しい。そんな一方的な関係性のまま2年が過ぎて中学生に
�ʤä��������ĤȤ��̡��Υ��饹��

次の授業の準備をしていた時、廊下側の窓からアイツがウチのクラスを覗いていた。中村
さんがいるからだ。そのお陰で休憩時間や放課後にアイツの姿が目に映って、自分として
は中村さんにちょっと感謝していた。だから今回もアイツは中村さんに会いに来たんだろ
���ȡ���ʬ�ϻפäƤ�����

「習字道具かして」
����

広辞苑に載せる例としてこれ以上にないお手本に成り得る「え?」を返したと思う。

「貸してってば、習字道具」
なんで?
「ウチ、次、習字だから。持ってくんの忘れたの」
他の人から借りればいいじゃん。
�֥�����
���������ʤ��衣�����ߤ��ʤ���
「超ケチ。借りるね」

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。


ホーム